1999年6月、山陽新幹線福岡トンネルでコンクリート魂が落下し走行中の新幹線を直撃する事故が発生又、同年10月、11月に山陽新幹線北九州トンネル、室蘭本線礼文トンネルに於いても同様な事故が発生し大きな社会問題になりました。
原因は、アルカリ骨材反応、コールドジョイント等と報道されましたが複合的要因と考えられます。土木学会コンクリート標準示方書(2002年改訂版)の大きな特徴は「性能照査型」であります、要約すると『規定書通りの構造物を作る事が基本ですが、日本の土木技術者がコンクリートの性状を理解し、新技術、施工方法を駆使しより優れた永久構造物を作る事』です。
最終的に構造物はコンクリートの塊です、コンクリートの性状を根本的に理解し施工計画段階から「配合、運搬、打設、養生」の検討(照査)が必要であります。
明かり巻きトンネルの現場に於いて、アウトセントルの先行脱型が主流に成りつつあり、アウトセントルを打設後1日で脱型する事で急速施工を可能に成りました。積算養生温度を考慮すると、冬期施工の場合十分な保温養生を実施する必要性があります。
一般的にコンクリート躯体をシートで覆いジェットヒーターで加温する方法が主流ですが、欠点として
①十分に密閉できない
②乾燥収縮の発生
などがあげられます。
2重構造のシート内部に温風を送気する方法の場合、長所として
①完全にシート(バルーン)がコンクリート表面に密着する
②温度制御が可能
③湿潤状態が保てる
などがあげられます。
脱型後からバルーンを覆い温風(50℃)を送風。1時間で10℃上昇し、24時間で20℃以上の上昇。脱型時の外気温度が7℃であり、明け方最も冷え込んだ時の外気温度が-3℃。養生温度の温度勾配は外気温度に殆ど影響されず、ほぼ一定の温度勾配でありました。
この結果からバルーン+温風は冬期施工時十分な保温養生が可能と考えられます。又、養生中コンクリート表面が常に濡れた状態であったので同時に湿潤養生も可能と判断できます。