(1)日平均気温が4℃以下になることが予想されるときは、寒中コンクリートとしての施工を行うものとする。
(2)トンネルの貫通後には、通風等により温度、湿度が低下することがあるため、必要に応じて適切な対策を講じなければならない。
(1)について 打ち終わったコンクリートに水和反応により十分な強度を発現させ、所要の耐久性、水密性等の品質を確保させ、有害なひび割れが生じないようにするためには、打ち込み後一定期間中、コンクリートを適当な湿度のもとで十分な湿潤状態に保ち、かつ、有害な作用の影響を受けないようにすることが必要である。
覆工コンクリートは、一般に脱型が早いため型枠存置に十分な養生効果は期待できない、しかしながら、トンネル内は、坑口付近を除いて温度が安定しており、湿度も高い状態となっている。また、覆工コンクリートは、背面が自山に面しており外気に露出しているのは一面のみである、日照作用もなく風等の影響もほとんど受けない、そのため、コンクリート表面からの逸散は、一般の屋外コンクリート構造物よりも格段に少ない、このような状態が確保されているトンネル内は、湿潤状態に保たれていると見なせるので、一般には、特に付加的な養生は行っていない。
なお、十分に硬化していないコンクリートに振動、衝撃などを加えると、ひび割れや損傷を与えることがある、発破工法でトンネル掘削を行う場合には、切羽とコンクリート打設地点は、適切な距離を確保することが望ましい。
(2)について トンネル貫通後は、通風が生じるのが通常であり、トンネル内の温度、湿度が低下する場合がある、覆工コンクリートの初期材齢における通風は、坑内環境によってはコンクリートの所要の品質に影響が生じることも考えられる、このような状況がある場合には、防風用のシートを張るなどして、必要に応じて適切な対策をするようつとめるものとする。
コンクリートの養生にあたっては、ひび割れ抑制が計画どおりに行えるよう、温度および湿度を適切に管理する必要がある。
トンネル内は、坑口付近を除いて一般に湿度が高く、温度も安定している、日照作用もなく、風などの影響もほとんど受けないため、トンネル内はコンクリートの養生に適した湿潤状態に保たれているとみなして、一般には付加的な養生は行われていない、しかしながら、トンネル貫通後の通風や換気などにより環境雰囲気が変化する場合には、防風シートを張るなどの適切な対策を講じることが必要で、第一部10,7養生および第三部6.6養生を参照するのがよい。
また、温度応力によるひび割れの発生が特に問題になる場合には、コンクリート部材内の温度差が大きくならないよう、また部材全体の温度降下速度や乾燥収縮が大きくならないよう、場合によってはトンネル坑口に養生扉を設けるか、あるいは打設スパン区間の前後を養生シートで覆い、コンクリート温度をできるだけ緩やかに外気温に近づけたり、コンクリート部材内外の温度差が大きくならないよう配慮することが望ましい。
コンクリートの輸送に際して、コンクリート温度低下を考慮する。一般にレディーミックスコンクリート工場からコンクリート輸送中の1時間あたりの温度低下は、練り上がり後の30分間については荷下ろし時のコンクリート温度と外気温との差の30%、その後は15%と仮定する。
冬期のコンクリート温度は、レディーミックスコンクリート工場からの輸送中および現場内での撃ち込み終了時までに低下する。積雪時は、道路幅が狭くなって交通渋滞を起こし、輸送時間が長くなることがあるので、レディーミックスコンクリート工場の選定にあたっては途中の交通状態を考慮し、なるべく近くにある工場から選ぶのが望ましい。
AIJの寒中コンクリートでは、スウェーデンのセメントコンクリート研究所の試験結果から、回転式ドラムミキサーを使用した場合の輸送時間1時間に予想されるコンクリートの温度低下は、打ち込み時に要求されるコンクリート温度と周囲の気温の差の25%とした計算式を示している。またRILEMの寒中コンクリート指針では、練混ぜから打ち込み終了までのコンクリート温度の低下は1時間につきコンクリート温度と周囲の気温との差の15%程度であると仮定し、打ち込み終了時のコンクリート温度を計算することとしており、本指針も従来これに準じていた。
本会寒中コンクリートWGが寒中コンクリート工事対象に北海道内で行った調査によると、輸送時間が11分から40分程度の範囲の輸送中の温度低下は次式で表せる。
T1-T2=0.34(T2-T0)t
T1:コンクリートの練り上がり温度(℃)
T2:荷下時のコンクリート温度(℃)
T0:周囲温度(℃)
t:輸送時間(h)
練り上がり後のコンクリートは温度が低下しているアジテータ車に投入され、その際の温度低下が予想されること、コンクリート温度と外気温の差が大きいほど温度低下が速くなることから、練り上がり後の経過時間により温度低下の速さは異なる。そこで、1時間あたりの輸送中のコンクリート温度の低下は、練り上がり後最初の30分間については、荷下時のコンクリート温度と周囲の気温との差の30%程度、その後は15%であるとして、コンクリートの練り上がり温度は指定した荷下時温度、外気温、輸送時間から次式で計算することとする。
T1=T2+0.30(T2-T0)t 練り上がり後最初の30分間
T1=T2+0.15(T2-T0)(t+0.5) 練り上がり30分以降
T1:コンクリートの練り上がり温度(℃)
T2:荷下時のコンクリート温度(℃)
T0:周囲温度(℃)
t:輸送時間(h)